最近は『居酒屋』に行っても、ビールや焼酎等他の酒類を飲む消費者が増え、清酒を飲む人は少なくなった。長年、県内清酒の技術開発等の支援をしてきた者にはいささか寂しい感じがする。
日本人の食生活はこの数十年大きく変化し、和欧中韓‥諸外国の料理が家庭の食卓に日常的に登場するようになってきた。農林水産省の食料需給表、「国民一人・一日当たりの供給食糧」によると、牛乳・乳製品は35年前の2.5倍、肉類は3.0倍にもなっている。清酒も生酒や吟醸酒、純米酒が広く浸透し、味の成分が辛口淡麗化してきている。
この間の食肉需給の増加量はワイン(果実酒類)販売数量の増大に対応している。しかし、消費者の嗜好の急激な変化からすると、その幅は小さい。清酒の消費が斬減傾向にある要因の一つは、清酒の甘辛を含めた味覚が、現代の消費者一般の嗜好に合わなくなってきたためではなかろうか。清酒はミクロ的にみると差別化されているようにみえるが、大きな嗜好の変化から取り残されているように思われる。嗜好の変化につれて消費者は嗜好に対応した酒類を選択していく、清酒にもアドリブがきく多様性が要求されている。
何とか個性のある清酒ができないものか‥。新しい製法が開発されてはいるが、清酒の製造方法は本質的には旧態依然である。清酒酵母はすべて清酒もろみから分離された優秀なものが使用されてきているが、各酵母はみな親類関係にある。「自然界には多くの酵母が存在している、分離する対象を拡げてみたらユニークな酵母がいるのではないか」と思った。 |